著者からのメッセ−ジ

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「糖尿病を友として」「糖尿病と心の療法」の 

  著者からのメッセ−ジ

2,糖尿病の病期別分類法について

『 糖尿病と言う死亡名がないことは、すでに皆さんにはご存知の事と思います。
それは糖尿病の悪化が原因で脳梗塞とか心筋梗塞などで死亡しますので、脳卒中とか心不全と言った死亡名になります。それだけ糖尿病は種々な病気の発病の火種になっております。

私が一昨年の車椅子の生活に至った『末期的神経障害』とか、人工透析の原因である『末期的腎症』や,現在最も衝撃的な『末期的ガン』など、末期的と言う絶望的な言葉が医師の口から軽がるしく出ますが、この言葉には私は抵抗感を抱いておちます。

「末期ガン」と宣告された患者が奇跡的に病状を克服した例は数多くあります。又、人工透析を20数年も継続している患者もおります。末期的と言う言葉を「これ以上は悪くはならない状態」と解釈することで、私はそこに止まることなく自分の人生をプラス思考で難局を乗り越えております。

医学的モラルとして末期的と言う言葉をタブーとする学説があります。臨床学的に最善の手を尽くして最終的に行着くところが此処であっても、最初から末期的と診断することは医療の放棄であると指摘されても止むを得ません。現代医学においてもまだまだ未知の分野があり、十分に解明されていない問題点を放置して末期的と診断することは、患者の人権を無視した暴挙ではないでしょうか?。

特に糖尿病には末期的病状はありません。血糖コントロールが崩れて乱高下することがありますが、この変調が長期間続くと糖尿病の末期と思われるとしたら大きな過ちです。これは修正可能な変調ですので適正な状態に回復するように自己管理を強化すべきです。然し、それぞれの合併症には末期的と言う言葉が付随することに問題点を感じます。

私は最近、糖尿病を病期毎に三段階に分類して考察しております。この分類方法は医学的にも存在しない私の私的な理論ですので、こう言う考え方もあるのだと認識なされる程度に止めていただきたいと存知ます。なぜこの様な考え方をしているかは私が『末期的神経障害』と診断された時、その実態を知ることに恐怖感があり主治医に質問することが出来ませんでした。

然し、知らない方がもっと不安であります。今回の骨折で二度目の手術を受けた大学病院の助教授に、骨折した経緯(いきさつ)を説明した際に末期的神経障害のお話をしましたら、そのような病名はないと一笑にふされました。インターネットで検索しましたがどのHPにも記述されておらず、諦めかけた時に偶然1件記述しているHPを発見いたしました。

私がこの度の大腿部骨折で二度合わせると四ケ月にも及ぶ長期間入院していて、病床で考えることは常に糖尿病に関することで、この状況を皆さんにどのような形で報告すべきか、糖尿病と骨折と言う全く関係のない病状を結びつける素因が、神経障害や血管障害の進行に伴う平行進行にあることを理解して頂くことでした。糖尿病を発病してから38年になりますが、現在に至るまでの道程(みちのり)は長い苦悩との闘いでした。

この期間に起きた種々な病状は三大合併症に限らず、多くは糖尿病と拘る病状であり底知れぬ怖さを知らされました。これらの病状を自分の体験を通して整理すると、臨床学にはない別の理論が成り立つことを確信致しました。この糖尿病の三段階分類とは『初期的病状』『中期的病状』『末期的病状』です。


『初期的病状』=発病時から合併症が発症する迄の期間で、10年〜20年と個人的には大きくバラついております。平均的には15年が次の病期との境界です。このバラ付きの原因は糖尿病が発病したら現在では必ず教育入院が実施され、薬物療法を始め食事療法や運動療法について教えられます。

これらの療法を忠実に実行している患者は合併症の発症が遅く、痛くも痒くもない病状に慣れて病気を甘く判断して、元のライフスタイルに戻ってしまった患者は早期に合併症が発症します。特に2型DM患者は食事療法が大きな障害になりますが、この障害を回避した患者は自から病気の進行を早めております。

この病期に早期に現れてくるのが高血糖と低血糖の症状です。高血糖は空腹時血糖値が常160mg/dl以上ある状態です。特に2型DM患者の場合は300mg/dlを超えた状態を知らずに放置している患者もおります。この高血糖の状態が長期間継続しておりますと種々な病状が発病して来ます。最悪の場合は【高血糖昏睡】に陥り死亡する例も数多くあります。対応策は血糖値を正常に戻すことです。医師と相談して血糖降下剤を服用するか、安定する迄の一時期インスリンを使用することもあります。

低血糖はIDDM患者に現れる典型的な糖尿病の症状です。メールの会でも今迄に何度も会員からの相談があり、多くの方々が自分の体験を通してアドバイスされております。糖尿病の初期病期では明らかな自覚症状が現れますので、早期に糖分を補給すれば【低血糖昏睡】に陥る心配はありません。

糖分補給は病院ではブドウ糖を点滴注射か静脈に直注しますが、自己補給の場合は糖質のあるジュースを飲んだりチョコレートやアメ等の甘いものを食べることで、低血糖の症状を改善できますが問題はこの糖分の補給量です。

自己管理が十分に出来ていない時期ですので,低血糖の症状が治まるまで不安のため何かを食べ続けてしまいます。当然リバンド現象が起こり1時間後に血糖値を測定したら300mg/dlを超えていたといった経験は何方もお持ちだと思います。

適正な糖分補給量はその時の血糖値の数値によって大きく異なることは当然です。自覚症状が現れた直後ですと測定しても50〜60台ですが、すぐに対応の取れない環境にいる場合は時間と共に血糖値はどんどん低下して行きますので、30台までだと何とか持ち応えることが出来ますが、20台または「Lo」の状態になると低血糖昏睡は免れません。

つい10数年前までは血糖測定は病院で行われており、患者は自分の血糖値を知らずにおりました。自己管理は尿糖検査が主体ですので、テステープの変色に一喜一憂しておりました。このテープの変色は±0〜+5迄の6段階がありますが、正常血糖値の110kg/ml以下であればテープは変色せずに±0ですので、70kg/dl以下の低血糖値であっても試験紙では分かりません。

低血糖を確認できるのは本人の自覚症状だけです。そのため朝の血糖値が低い時でも規定のインスリンを注射することにより起こる、低血糖昏睡は15年位前までは十分有り得た現象でした。

現在では薬局でドロップス状の飲むブドウ糖錠剤が販売されており、これは1錠に含まれる糖分が明示されておりますので、症状によって何錠飲めば正常な血糖値に回復するか自己判断が可能です。自己管理でジュース類の一般的な糖分補給よりは容易です。この錠剤は病院でも薬剤として処方してくれますが、その量には制限があり十分なものではありませんので、低血糖が頻繁に発症する患者は自費購入が必要です。尚、携帯に便利であることと水なしで飲むことができることが最大の利点です。

血糖測定器が一般的に普及しだしたのは、14〜15年前ですので歴史は浅いですが、初期の測定器と現在の測定器とではその性能には大きな格差があります。注射器を始めとして医療機器メーカーの開発技術は著しいものがあります。

このような状況の中でも依然として普及していないのが【糖尿病患者カード】です。現在このカードを保有しておられる方は何人いますか?。私が所持するようになったのは平成5年ですからまだ10年足らずです。そのカードも損傷著しく数年前に破棄してしまい、現在は【糖尿病患者】であることを証明するものは何も保持しておりません。

なぜこの【糖尿病患者カード】が重要なのか?、糖尿病患者が街の中で低血糖昏睡で倒れた時に、救急車が出動してきても昏睡状態の患者の病状を確認することは出来ません。このカードを携帯しておりますと患者の氏名や住所・電話番号や懸かりつけの病院・主治医の氏名を知ることができます。救急隊員は適切な処置をして近くの最適な病院へ搬送して下さいます。

然し、このカードを発行しているのは病院ではなく、医療機器メーカーが測定器のサービスとして支給しておりました。現在はどのようになっているのか知りませんので、何方かお教えしていただければと思います。


『中期的病状』=この病期はDM患者にとっては最も自己管理の重要な時期です。私が「自己管理」ではなく「自主管理」を提唱するのもこの病期です。末梢神経障害の発症を始めとして、糖尿病性白内障の発症と共に網膜の眼底出血が見られるようになり、更に腎臓の機能低下が始まる病期でもあります。この病期に適正な診療と処方をおこなっていれば、次に訪れるであろう末期的な病期を阻止するか、少しでも病期を遅らせることが出来るでしょう。

この病期は長く多くの困難を伴っております。恐らく糖尿病歴30年以上を経過して来た患者は、その多くをこの病期の中で病気と闘っております。そのような状況の中で病状に冒された多くの患者は、足の切断や失明さらに人工透析と言った重大な障害に冒されて、末期的な病期へと進行しております。ではこの最も困難な病期をどのようにして安定した期間とするかは、あなた自身の自主管理にかかっております。

多くの病状は早期発見、早期治療が原則ですが、患者自身に自覚認識がなければ常に後手に回ってしまい、手遅れの状態に陥ってしまうことを知るべきです。特に神経障害は末梢神経や自律神経を阻害し、多くの病状を誘発してきます。

末梢神経障害は手足の神経を麻痺させ知覚神経が冒されて、微細な切り傷や火傷を始めとして靴擦れ、水虫(白癬)・魚の目(鶏眼)・たこ(べんち症)などの皮膚疾患など、足に拘る問題は軽視していると潰瘍から壊疽へと進展して行き、最終的には足の切断と言う重大な障害に至ります。フットケアがいかに重要かは糖尿病患者にとっては基本的な知識として習得すべきです。

自律神経障害は多肢に亘り多くの病状が現れます。脈拍変動・体温変動・起立性低血圧・異常発汗・消化機能低下・膀胱機能・下痢便秘など、その範囲は広く日常的に病状が現れて生活のリズムを狂わせてしまいます。脈拍変動や体温変動が発症しますと病状は非常に深刻になります。消化機能の低下は食前のインスリン注射との相関関係があり、消化によるカロリーの分泌吸収よりも先にインスリン効果が作用して、食後低血糖と言う思いもかけぬ症状に至ることがあります。

便秘は健常者でも常習的に起こる病状ですが、自律神経が阻害されますと便秘そのものが慢性化していきます。その反面で便秘対策の便秘薬を過剰に服用すると急激な下痢の発症を招き、時には一度に排便できずに1〜2時間の間に何度をトイレに駈け込むことになり、このような状況が外出先で起こるとその対応は想像を絶する状態になります。肛門の筋収縮機能が低下していくと無自覚性の漏便に至ることもあります。

膀胱の筋萎縮障害は頻尿と残尿と言う病状を誘発します。これは交換神経と関連しており日中には異常がないのに、副交換神経が働いている夜間に起こる病状で、1時間から2時間位の短い時間で尿意を感じて目を覚まします。この時の排尿量は非常に少なく50〜60cc位です。多くは残尿として膀胱に残っております。

この残尿が100cc以上ありますと感染症が起こり易く尿毒症と言う病状を発症して、体の腐敗にまで至ります。残尿を治療するための内服薬がありますが、副作用として血圧を下げる危険性がありますので、泌尿器科の医師は代替療法として尿路にカテーテルを挿入して排尿することを推奨しております。

起立性低血圧は朝ベットから起き上った時に、急激に血圧が低下して眩暈を起こし行動を起こすと卒倒する危険性を抱えております。又、日中でも椅子に長い時間座っていて立ち上がる時に起こる立ち眩みは、卒倒による重大な事故に直結する危険性を持っております。

これは下半身に血液が溜まって脳を流れる血液が少なくなってしまうために生じることから「脳貧血」と呼ばれております。然し、もともと「貧血」と言うのは血液の中の赤血球数と赤血球の容量、および赤血球中のヘモグロビンが正常以下になるような病気であり、簡単に言へば全身の血液が不足していることで、起立時に脳の血液が減少して起こる「脳貧血」と「貧血」とは全く別のものです。

糖尿病性白内障は老人性白内障と異なり、若いDM患者にも発症する目の疾患です。白内障は目に白い濁りが発生してかすみや視力の低下が起こります。白内障が進行して行きますと眼底の出血を眼科医でも見逃してしまうことがあります現代医学では白内障の手術は日帰りでも行なわれておりますので、病状が余り進行していないうちに手術を受けるべきです。

眼底出血は光凝固療法と言うレーザー光線を照射して固めてしまう治療方法ですが、一度で完全に治癒する疾患ではありませんので、治癒したと安心せずに眼科医には定期的に受診することが必要です。

糖尿病の眼の合併症として網膜症と共に黄斑症があります。黄斑は眼底のほぼ中央に位置する黄褐色の部分を指します。この黄斑が傷められると視力が低下します。この疾患の原因の一因として糖尿病が関与しております。網膜症と黄斑症の違いは症状を自覚できるか否かにあります。網膜症の自覚症状は硝子体出血や網膜剥離が起きた時に急に現れ、それまでは患者本人が全く気が付きません。
ところが黄斑症の場合たとへ黄斑以外の網膜が正常だとしても視力は著しく低下していきます。網膜剥離が起これば手術を受けても失明する危険性は高いです。

糖尿病に罹って10年以上経過している人で、血糖コントロールが悪く高血糖状態が長く続いていると、腎臓の糸球体の毛細血管に障害が起きてきます。そのため腎機能が低下して尿の中に蛋白が出てきたり、高血圧や浮腫などの症状が起こります。腎臓が十分に働かなると体に不必要な老廃物が溜まりがちになり、逆に必要なものが出ていったりして、体内環境のバランスが悪くなります。尿は腎臓を始め体の変調を知るバロメーターです。進行すると腎不全から尿毒症となりますので人工透析が必要になります。

糖尿病性腎症は自覚症状がなく、検査でタンパク尿が出たときには既に発病しており、いったん発病しますと腎症は完治することはできません。然し、最近では尿中に微量アルブミンを調べて、ごく初期の腎症を発見する検査が行われるようになりました。早期発見して厳しく糖尿病をコントロールすれば腎症の進行を抑えることが出来るので、糖尿病患者は異常が発生する前に定期的に検査を受けることが大切です。


『末期的病状』=この病期は非常に複雑で糖尿病が発病してから何年目だからと定義ずけることは出来ません。人によっては10年未満でも合併症が発症して末期的な病状になることもあり、40年経過していても血糖コントロールが良好な人は合併症の発症も軽くすみ、健常者と同じような日常生活を送っておられます。

ではなぜこの様に大きな格差が発生するのか、患者自身が一番よく判っておられると思います。特に2型DMの場合は糖尿病と診断されても、本格的な治療に取り組まれない人は意外に多くおられます。その結果として高血糖の状態が続いており早期に合併症を発症しております。重大障害に冒されて初めて糖尿病の初期治療の重要性を認識しております。

このことは1型DMにおいても言えることです。インスリンを毎日注射しているから大丈夫だと思われておられる方が結構おられます。インスリンを注射していても血糖コントロールが十分に行なわれていなければ、合併症は早い時期にあなたを襲ってきます。

糖尿病の三大合併症は末梢の神経障害や、眼底とか糸球体などの毛細血管に障害が起こり発症します。これらの病状は適切な早期治療を受けることで重大障害を回避することが出来ます。然し、一つ処方を誤ると足の切断・失明・人口透析と言った末期的病状に至ります。

糖尿病の本当の怖さはこれからです。今迄は初期から中期にかけて発症する病状でしたが、糖尿病の経年と共に襲って来るのが全身の神経障害や、動脈硬化による血管障害です。これらの障害が進行すると生命の危機をも招くことになります。神経障害は無痛性心筋梗塞や無自覚性低血糖昏睡に陥り【突然死】に至ります。

心筋梗塞は激しい胸痛に襲われて早期対応が必要ですが、無痛性であれば発作が起きても本人自身に自覚がないため、何らの対応も取らずに意識が無くなり、救急車を呼んで病院へ搬送された時には既に心臓が停止しております。これには狭心症とか軽度の心臓疾患があることが布石になっておりますので、これらの治療を早い段階で受ける必要があります。

無自覚性低血糖はかなり早い時期から発症しますが、私の経験ですと体感と言う重要なシグナルがあります。この体感を感知するには多くの低血糖発作を経験しながら習得していくしか方法はありません。日中の低血糖症状は一般的な発作症状は起こりません。然し、その日の行動によって低血糖の危険性を予知することは出来ます。

私は現在、月に一度の定期診療のために病院へ行きますが、それ以外では用事ができない限り外出をすることはありません。このように体を動かしている時や来客で長い時間話し込んでいる時は要注意です。低血糖が進行している時は体に違和感がありますこれが体感です。初期の頃はよく血糖測定を行いましたが血糖値は40〜60台のことが多く、状況を把握出来るようになてからは、状況判断だけで血糖測定は行なはずに糖分補給の対応を適正に取っております。

それでも夜間の睡眠中の低血糖を感知することは不可能だと思います。私の場合は膀胱の筋萎縮と言う傷害がありますので、特に夜間の排尿は2時間前後で尿意をもよおして目を覚まします。現在は一日4回の血糖測定をおこなっておりますが、その内の1回が夜間の11時〜12時ですので、この時間に測定しますとよく60以下の低血糖の状態の時があります。

稀に40以下の危機的な低血糖値でも自覚症状は全くありません。低血糖の対策は全て自己流の糖分補給方法で対応しておりますが、現在までトラブルを起こすことなく無難に過ごしております。このような状態は通常であれば目を覚ますことなく低血糖は進行して行き昏睡状態に入ってしまいます。その結果朝家族が起き異常に気ガ付いた時には、既に意識障害に陥っているか最悪の場合は死亡していることもあります。

低血圧の病状に「体位性頻脈症候群」と言うのがあります。起立時にふらつきや疲労感などの低血圧症状があっても、明かな起立時の低血圧がなく、一方で著じるしい頻脈を生じる病状で、起立時の脈拍数が1分間に115〜120以上であったり、横になっている時と比較して30〜35以上も増加します。この症状は起立性低血圧と非常によく似ており、立ち眩み・全身倦怠・動悸・失神・頭痛など多くの症状を伴います。起立時の低血圧がはっきりしていないので、医師から『体には特に異常はありません精神的なものです』と言われます。今回の私の卒倒による大腿部骨折の原因は正にこの医師と同じ診断でした。

体位性頻脈症候群の原因はまだはっきりとは分かっておりません。今のところ有力な考え方は、起立によって下半身に血液が過剰に貯留するため、血圧や血流を維持するため代償的に心臓は拍動してしまうと言うことです。他に、心臓を動かすための受容体の感受性が高いために起こると言う考え方もあります。

下半身での血液の過剰な貯溜は静脈血管に何らかの異常が発生し、機能が悪くなっているために生じると言われております。脳内の酸素化ヘモグロビンが起立時に酷く低下しており、起立位や座位でいることの多い日常生活において、脳内の動脈血(酸素や栄養を含んだ綺麗な血液)の供給が低下することを意味しており、そのため脳の血流障害が生じ様々な病状を引き起こしております。

失神とは「外傷性に起因しない可逆的な意識消失であり、その結果起立位を保持出来ない状態」と定義されております。不整脈などの心臓が原因となるものや癲癇発作などのはっきりした原因を除くと、その殆どは神経調節性失神と考えられております。突然の低血圧発作によって脳血流が維持されなくなり意識消失が生じます。

糖尿病の進行に伴って網膜症や腎臓障害・動脈硬化など多くの合併症が現れて来ます。特に腎臓の機能が低下し人工透析を行なっている人は高血圧であると言われておりますが、逆の低血圧の患者が多く見られます。この低血圧は透析施行時に一過性に見られるものと、透析施行時以外も低血圧状態が常時続いている場合があり、透析によって血液を濾過した際に体の中を循環する血液の量が減少することや、他の様々な要因が複合して起こると考えられております。

糖尿病は血管の病気であると言われております。特に末期的病期に入りますと今迄の毛細血管の障害から、太い血管まで冒されて動脈硬化が早く進行します。動脈硬化とは動脈血管の壁が硬く、脆くなり血管が詰まり易くなったり、破れ易くなることで、歳をとると程度の差はあれ誰にでも起こって来ます。動脈硬化を進める危険因子には、糖尿病のほかに高血圧、高脂血症(血液中のコレストロールや中性脂肪が高すぎる病状)、肥満、喫煙などがあります。糖尿病で血糖の高い状態が続きますと動脈硬化も早く進みます。

動脈硬化を予防するためには、血糖コントロールだけでは十分ではなく血圧の正常化、高脂血症の是正、体重の適正化、喫煙などを守り危険因子を一つずつ取り除く努力が必要です。糖尿病患者に多くみられる動脈硬化の病状に脳卒中、心筋梗塞、足の壊疽があります。

脳卒中には脳を養っている動脈が詰まって起こる脳血栓や脳梗塞と、血管が破れて脳の中に出血する脳出血があります。初めに手足に麻痺が起こったり、意識を失って倒れたり、言葉が出なくなったりします。脳卒中にならなくても頭が重い、怒りぽい、物忘れが酷いなどの症状が現れます。脳梗塞の程度は眼底検査、脳のスキャン、脳のMRIなどで或る程度わかります。脳卒中で倒れますと時には生命の危険に至ります。

この他に一過性脳虚血発作は脳の循環障害により局所症状を呈する発作で、数分以内に回復するか遅くても24時間以内には回復します。頚動脈の動脈硬化性病変から剥離した微小な血栓による小塞栓が推定されております。又、くも膜下出血や硬膜下血腫などの重篤な病状があります。

心筋梗塞は心筋を養っている動脈が詰まって起こります。心筋の一部に血液が流れなくなりますと心臓の働きが悪くなり生命に拘ってきます。又、狭心症は心筋を養っている動脈が痙攣したり細くなったりして、一時的に心筋に十分な血液を送ることが出来なる状態です。狭心症は心筋梗塞発症の前ぶれとであるとも言われております。

狭心症や心筋梗塞が起こると胸が締付けられるような痛みが普通はあります。然し、末期的神経障害に罹るとはっきりした症状が現れません。たまたま心電図をとって分かったり、息切れを起こしたり、冷汗をかいたり、脈拍が不規則になったり等の症状が出て、検査をして初めて分かることが多いのも特徴的です。心電図などの検査を定期的に受けることが早期発見に繋がります。

足に血液を送っている動脈に硬化が進行してくると、歩いているうちに足や脹脛が痛くなり、暫く休むと痛みが薄らぎまた歩けるといった特有な症状があります。これを間欠性破行と言います。足の動脈硬化が酷くなると足先の方から血管が詰まり、痛みと共に壊死を起こしてきます。

このような状態を壊疽と言います。動脈硬化による壊疽は痛みが激しいのが特徴的ですが、糖尿病性神経障害による足の壊疽は動脈硬化による壊疽とは異なり、痛みが全く感じないのが特徴的です。然し、糖尿病患者は動脈硬化と神経障害が組み合わさって足の壊疽を生じることも少なくはありません。

近年アメリカなどでは硬化した足の動脈の血管バイバスを作り、下肢の切断を回避する手術法が普及しております。日本でも一部の病院では実施しておりますが、手術に困難性があって一般的な治療方法とはなっておりません。動脈硬化を予防するためには、そのリスク・ファクター(危険因子)を取り除く努力が日頃から心掛ける必要があります。

E-mail  takatetu3@ybb.ne.jp
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  糖尿病と心の療法  著者 高 橋 高


   

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